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【まるわかり解説】階段〔令第23条〜令第27条など〕

今回は、建築基準法における【階段】について解説します。

【階段】
〜この記事を読むとわかること〜

  • 階段の規定内容について
  • 屋外階段の緩和によくある間違いについて
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目次

階段について

階段は日常的な建物動線として、また火災などの非常時の避難動線として、大きく2つの機能を果たしています。
この記事では単体規定として定めている階段の規定、建築基準法施行令第2章、第3節(第23条〜第27条)について解説していきます。
法文に書いてあることはとてもシンプルなのですが、よく間違いがあったり、質問をもらうことがあるのでそれぞれ解説していきます。

法令解説

令第23条:階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法

令第23条第1項

(建築基準法施行令第23条第1項本文)
階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法は、次の表によらなければならない。

令第23条第1項では階段に関する4つのことについて定めています
 ①階段の
 ②階段の踊場の幅
 ③階段の蹴上げの寸法
 ④階段の踏面の寸法

階段の種別によって上記4つの規制が異なります
それでは、表を確認しましょう

建築基準法施行令第23条第1項表
階段の種別 ①階段の幅
②踊場の幅
③蹴上げの寸法 ④踏面の寸法
(一) 小学校※1
における児童用
のもの
※1:義務教育学校の前期課程を含む。
140cm以上 16cm以下 26cm以上
(二) 中学校※2
高等学校
中等教育学校における生徒用
のもの
※2:義務教育学校の後期課程を含む。
140cm以上 18cm以下 26cm以上
物品販売業※3を営む店舗
床面積の合計が1,500㎡を超える
もの
※3:物品加工修理業を含む。
劇場
映画館
演芸場
観覧場
公会堂
集会場
における客用
のもの
(三) 直上階の居室の床面積の合計が200㎡を超える
地上階
におけるもの
120cm以上 20cm以下 24cm以上
居室の床面積の合計が100㎡を超える
地階・地下工作物内
におけるもの
(四) 上記以外のもの 75cm以上 22cm以下 21cm以上

原則、上記表による数値が規制になりますが
「屋外階段」と「住宅の階段」は緩和規定を適用することができます
※共同住宅の共用の階段を除く

(建築基準法施行令第23条第1項ただし書き)
ただし、屋外階段の幅は、令第120条又は令第121条の規定による直通階段にあつては90cm以上、その他のものにあっては60cm以上、住宅の階段(共同住宅の共用の階段を除く。)の蹴上げは23cm以下、踏面は15cm以上とすることができる。

緩和適用の階段の種別 ①幅
②踊場の幅
③蹴上げの寸法 ④踏面の寸法
屋外階段 令第120条又は令第121条の規定による直通階段 90cm以上 令第23条第1項表(一)〜(四)による
その他の階段 60cm以上
住宅の階段
※共同住宅の共用の階段を除く
令第23条第1項表(三)〜(四)による 23cm以下 15cm以上

このただし書きはあくまで、緩和規定であることに注意しましょう

例えば、表(四)で幅75cm以上としなければならない階段が(令第120条・令第121条による)直通階段の場合、幅90cm以上としなければならない、というのはよくある間違いです
強化規定と勘違いしていることが特定行政庁や民間の指定確認検査機関でもあるほど
設計者の方は特に注意していただければと思います

令第23条第2項

回り階段の部分における踏面の寸法は、踏面の狭い方の端から30cmの位置において測るものとする。

令第23条第3項

階段及びその踊場に手すり及び階段の昇降を安全に行うための設備でその高さが50cm以下のもの(手すり等)が設けられた場合における第1項の階段及びその踊場の幅は、手すり等の幅が10cmを限度として、ないものとみなして算定する。

廊下に手すりを設ける場合は注意が必要です。
階段・踊場の幅には手すり等の幅の除外規定がありますが、廊下の幅には同じ規定がありません。
バリアフリーなどで廊下に手すりの設置義務がある場合などは注意してください。

令第23条第4項

(令第23条)第1項の規定は、同項の規定に適合する階段と同等以上に昇降を安全に行うことができるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いる階段については、適用しない。

平成26(2014)年国土交通省告示第709号

第1 令第23条第4項に規定する同条第1項の規定に適合する階段と同等以上に昇降を安全に行うことができる階段の構造方法は、次に掲げる基準に適合するものとする。
 階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法が、次の表の各項に掲げる階段の種別の区分に応じ、それぞれ当該各項に定める寸法(次の表の各項のうち2以上の項に掲げる階段の種別に該当するときは、当該2以上の項に定める寸法のうちいずれかの寸法)であること。
ただし、屋外階段の幅は、令第120条又は令第121条の規定による直通階段にあっては90cm以上、その他のものにあっては60cm以上とすることができる。

既存建築物において注意する点は
該当する特殊建築物への用途変更や居室の床面積増加したい時
それらの変更によって対象の基準が変わってしまう場合は
既存の階段(階段の幅、階段の踊場の幅、階段の蹴上げの寸法、階段の踏面の寸法、踊場の位置、踊場の踏幅)は容易に変えることはできないので既存建築物を扱う上ではとても重要な要素となってきます。
こういった用途変更のハードルを一部解消するための緩和規定が平成26(2014)年に制定(、平成29(2017)年改正)され、一定の条件下においては緩和が適用できるようになりました。

令第24条:踊場の位置及び踏幅

令第24条第1項

前条(令第23条)第1項の表の(一)又は(二)に該当する階段でその高さが3mをこえるものにあっては高さ3m以内ごとに、その他の階段でその高さが4mをこえるものにあっては高さ4m以内ごとに踊場を設けなければならない。

令第24条第2項

前項(令第24条第1項)の規定によって設ける直階段の踊場の踏幅は、1.2m以上としなければならない。

直階段とは、もし転倒した場合に転げ落ちてしまうような真っ直ぐな階段のことです。
折り返しする階段でも真っ直ぐな部分が規定の高さを越えれば踊場を設け、その踏幅は1.2m以上としなければなりません。
なお、令第24条第1項の規定によらない任意の踊場の踏幅は1.2m以上にしなくても問題ありません。

令第25条:階段等の手すり等

 階段には、手すりを設けなければならない。

 階段及びその踊場の両側(手すりが設けられた側を除く。)には、
  側壁又はこれに代わるものを設けなければならない。

 階段の幅が3mをこえる場合においては、中間に手すりを設けなければならない。
  ただし、けあげが15cm以下で、かつ、踏面が30cm以上のものにあっては、この限りでない。

 前3項(令第25条第1項〜第3項)の規定は、高さ1m以下の階段の部分には、適用しない。

第4項の適用除外は部分規定になるため、高さが1mを超える場合でも高さ1m以下の部分だけを手すりや側壁を設けない、ということが可能です。

令第26条:階段に代わる傾斜路 

 階段に代わる傾斜路は、次の各号に定めるところによらなければならない。
 一 勾配は、1/8をこえないこと。
  表面は、粗面とし、又はすべりにくい材料で仕上げること。

階段に代わる傾斜路(スロープ)の勾配は1/8以下で、表面は粗面とするか、すべりにくい材料で仕上げること。
すべりにくい材料については明確な基準がありません。
また、あくまで「階段に代わる」傾斜路の基準になるので傾斜路すべてがこの基準としなければならない訳ではありません。
例えば階段に代わらない車路用のスロープや、一段程度のフリーアクセスフロアを解消するためのスロープも本規定の対象ではありません。

 前三条(令第23条〜令第25条)の規定(けあげ及び踏面に関する部分を除く。)は、前項(令第26条第1項)の傾斜路に準用する。

蹴上の寸法と踏面はスロープなので除外されますが
傾斜路の幅、傾斜路の踊場の幅、傾斜路の踊場の位置、傾斜路の踊場の踏幅については
令第23条〜令第25条を準用します。

令第27条:特殊の用途に専用する階段 

令第23条から令第25条までの規定は、昇降機機械室用階段、物見塔用階段その他特殊の用途に専用する階段には、適用しない。

昇降機階段室用階段については階段の規定が除外されていますが、エレベーターの機械室に通ずる階段は建築設備の規定(令第129条の9第1項第五号)で制限されています。 

第129条の9第1項第五号

機械室に通ずる階段の蹴上げ23cm以下、階段の踏面は15cm以上とし、かつ、当該階段の両側に側壁又はこれに代わるものがない場合においては、手すりを設けること。

この規定では高さ1m以下の除外規定がないため注意ください。

関係規定・条例

高齢者

よくある質問

【令第23条第3項】
両側に手すり等がある場合、適用できる手すり等の幅の緩和は両側合わせて10cmが限度ですか?

いいえ、片側ずつそれぞれ10cmを限度として、ないものとみなすことができます。

例えば出幅10cmの手すりが両側にあっても支障ありません。

根拠としては、「建築物の防火避難規定の解説2016」120ページに記載されています。

解説書の記載内容は本当か

開口部のない壁及び床で区画されている部分ごとに別の建築物とみなし階段の幅を適用することができる?

階段の規定の主旨から問題ないでしょう。
ただし、行き来できないこと、また、壁は蹴破れる隔壁のようなものではダメです。
(耐火建築物等でない「その他建築物」の場合は常識の範囲になりそう)

既存不適格を調べるための改正履歴

条項 改正履歴
(施行年月日)
概要
令第23条
:改正あり
昭和34年12月23日 屋外階段幅の緩和規定を一部強化
屋外階段の幅の緩和一律60cmから直通階段を90cmに強化
「地下工作物内におけるもの」追加
昭和46年1月1日 「物品販売業(物品加工修理業を含む)を営む店舗で
床面積の合計が1,500㎡を超えるもの」追加
平成11年4月1日 「中等教育学校」追加
平成12年6月1日 「手すり等の幅の緩和」追加
平成26年7月1日 「告示緩和」追加H26、709
平成28年4月1日 「義務教育学校の前期課程、義務教育学校の後期課程」追加
平成29年9月26日 「告示緩和」改正H29、709
令和元年6月24日 「告示緩和」改正R1、709
令第24条
:改正なし
令第25条
:改正あり
(表記等の変更を除く)
平成12年6月1日 手すり設置義務等の追加
令第26条
:改正なし
(表記等の変更を除く)
令第27条
:改正なし
令第129条の9
(旧令第129条の8)
:改正あり
昭和46年1月1日 エレベーター機械室に通ずる階段の規制追加

用語集:準備中

屋外階段
局部的な小階段
避難階段
屋内避難階段
屋外避難階段
特別避難階段
直通階段
直階段
周り階段
らせん階段
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この記事を書いた人

・建築基準法関連の業務を10年以上やっています
・指定確認検査機関の中の人(現役です)
 (プライベートでは2児の父)
・資格は一級建築士、建築基準法適合判定資格者(いわゆる主事資格)など
・得意分野は意匠系、排煙規定、検査済証がない既存建築物の法令調査など
・実績は7,000件以上、戸建住宅、事務所といった小規模・非特殊建築物から工場、劇場、百貨店、空港等の大規模・特殊建築物など様々物件の審査・検査・調査・相談などの豊富な経験があります

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(誰も見てくれなくても自分が見たいものを作ろうと思って続けています笑)

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