今回は、建築基準法における【敷地内通路】について解説します。
- 敷地内通路ってなに?
- どういう場合に設けなければいけないの?
- どんな規制なのか?緩和はあるのか?
- 法改正履歴が知りたい!
- よくある疑問点、問題点があれば教えてほしい!

それでは解説いってみましょう!!
↓簡単なプロフィール↓
・指定確認検査機関の現役会社員(2児の父)
・資格:一級建築士、建築基準法適合判定資格者ほか
・分野:意匠、既存建築物
・実績:住宅、事務所から劇場、百貨店、空港等の大型施設など
審査・検査・調査・相談の件数は7,000以上
敷地内通路とは
建築基準法では人命を守るために、主に建築物火災時に発生する煙やガスへの対策として安全に地上まで避難できるようにさまざまな規制をかけていて、その一つとして【敷地内通路】があります。
まずは建築物の避難経路とはどういうものか、一般的な構成をお伝えしたいと思います。
働いているオフィスビルや住んでいるマンションなど身近なものでイメージしてもらえるとわかりやすいかもしれません。
言われてみれば当たり前でシンプルな話ですが、このイメージを知らない人、知っている人の理解度や法解釈に圧倒的に差が出ます。上記はあくまで一般的な例で、ほかにも避難上有効なバルコニーや屋上広場を経由して避難するパターンもあったりしますが。
火災などの非常時に建築物の屋外への出口から地上に出た時点で避難完了、ではありません。
建築基準法では、地上に出た後に道路などの空地まで避難できることを人命を守るための手段としており、敷地内の通路が狭くて避難できないという状況等を避けて敷地内を安全に避難できるように【敷地内通路】にも制限を設けています。また、敷地内の通路は消防隊による消火活動を行う上でも建築物へのアプローチをスムーズに行うなどの機能も担っています。
【まとめ】敷地内通路について概略がわかる一覧表
通路の設置部分 | 適用対象建築物 | 通路幅 | |
【令第128条】 次の⑴・⑵から道などに通じる部分 ⑴屋外避難階段 ⑵避難階の屋外への出口 |
①特殊建築物(法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する)※ ※⑤に該当するものを除く |
・劇場、映画館、病院、ホテル、共同住宅、学校、百貨店、遊技場など | 1.5m以上 |
②中高層建築物※ ※⑤に該当するものを除く |
・階数≧3 | ||
③無窓居室(令第116条の2)を有する建築物※ ※⑤に該当するものを除く |
無窓居室 ・採光有効面積<居室面積1/20 or ・排煙有効面積<居室面積1/50 |
||
④大規模建築物※ ※⑤に該当するものを除く |
延べ面積※>1,000m2 ※同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計 |
||
⑤小規模建築物 | ・階数≦3 and ・延べ面積<200m2 |
90cm以上 | |
【令第128条の2第1項】 建築物の周囲の部分 (道に接する部分を除く) |
⑥大規模な木造建築物(主要構造部の全部 or 一部が木造)※ ※木造耐火建築物、木造耐火区画部分を除く |
1棟の延べ面積※>1,000m2 ※木造耐火区画部分を除く |
3m以上 (延べ面積が3,000m2の場合は、隣地境界線に接する部分は1.5m以上) |
【令第128条の2第2項・第3項】 建築物の周囲の部分 (道・隣地境界線に接する部分を除く) |
⑦複数建築物※ ※木造耐火建築物、木造耐火区画部分を除く |
2棟以上の延べ面積※>1,000m2 ※耐火建築物、準耐火建築物、延べ面積1,000m2を除く |
3m以上 (隣地境界線に接する部分は1.5m以上) |
よくある疑問点、注意点について
よくある疑問点、注意点について回答・解説します。
他にも質問がありましたらコメントいただけると幸いです。
改正履歴
条項 | 改正履歴 (施行年月日) | 概要 |
---|---|---|
令第128 :改正あり | 令和2(2020)年4月1日 | 小規模建築物における敷地内通路の幅員90cnの緩和追加 |
昭和25(1950)年11月23日からずっと変わっていなかった敷地内通路(現:令第128条)ですが、令和2(2020)年4月1日に既存建築物を活用するための合理化の一つとして改正で「小規模建築物の緩和」が追加されました。
【参考】解説書、特定行政庁の取扱い
※特定行政庁の取扱いは民間審査機関や全国で共通する考えものではないのであくまでご参考までに。
東京都江戸川区・埼玉県さいたま市
【江戸川区】
以下の取扱い基準は江戸川区で確認申請等を行う場合の取扱いであるため、民間の指定確認検査機関の見解を拘束するものではないとのこと。
3 階建て専用住宅等において、小規模車庫に面して玄関を設ける場合の令第 128 条に規定する敷地内通路の取扱いは、以下のとおりとする。
次の1及び2の条件を満足した場合は、1の通路先端部分を令第 125 条第 1 項の出口とみなし、 当該部分から令第 128 条の敷地内通路を要するものとする。
【条件】
1 玄関から有効 75cm 以上の通路を確保し、当該部分は床面積に算入している。
2 通路と車庫部分は、仕上げ・段差等により通路と車庫部分を明確に区別している。

【さいたま市】
3階建ての一戸建て住宅等においてピロティに面して出入口を設ける場合、当該出入口から敷地内通路を設けることが原則となるが、床面積が 30 m²以下の小規模なビルトイン車庫に面して玄関を設ける場合は、以下のとおり取り扱う。
次の1及び2の条件を満足した場合は、1の通路先端部分を令第 125 条第1項の出口とみなし、 当該部分から令第 128 条の敷地内通路を要するものとする。
1玄関から有効 75cm以上の通路を確保し、当該部分を車庫の床面積に算入している。
2通路と車庫部分は、仕上げ等により明確に区別している。
京都市
敷地内通路を敷地内だけでなく、建築物の一部を利用して設ける場合の制限などついて解説しています。
令第 128 条に規定する敷地内通路で,以下の各号に該当する場合は,建築物の部分に設けることができる。
1 通路部分は,外気に十分開放され,幅員有効 1.5m以上(柱や避難上有効なバルコニーに設けられたハッチからのタラップ等の障害物を除く有効幅員。) 確保されていること。
2 外部空間との関係は、以下とする。
・隣地境界線又は外壁に対して有効 25cm以上
・公園,広場,川等の空地又は水面などに面する場合はこの限りではない。
※3面・4面囲まれている部分は条件が違うので要確認(あとで図にします。)
3 専ら通路として使用され,通路の部分に,扉などの閉鎖的な設備が設けられ ていないこと。ただし,管理上の門扉で有効幅 1.5m以上あり,避難方向に開くことができるもので,通気性があり,見通しがきくものについては,設ける ことができる。
4 通路となる建築物の部分の主要構造部は耐火構造とし,通路の壁及び天井の下地,仕上げを不燃材料とすること。
5 通路には,原則として開口部を設けないこと。ただし,次に掲げる用途上やむを得ないものを除く。
(1)火災の恐れのない機械室(電気室を除く。)で,令第 112 条第 14 項第二号に規定する特定防火設備を設置したもの。
(2)共同住宅等の廊下,ロビー(通行の用のみに供するもの。)の出入口で,屋内側の内装が下地仕上共に不燃かつ,令第 112 条第 14 項第 2 号に規定す る特定防火設備を設置したもの。
(3)吹出口が通路上部の外壁面より突出した換気ダクトで,次のいずれかに該当するもの。
ア 外壁貫通部分に防火防煙ダンパーが設けられているもの。
イ 外壁貫通部分に防火ダンパーが設けられ,かつ,鉄製で鉄板の厚さが0.8 mm以上のもの。
ウ 鉄製で鉄板の厚さが 1.5 mm以上のもの。
6 駐輪場を設ける場合は,建物の外壁に沿って設け,自転車専用とし,ラック 式であること。
7 次のいずれにも該当するものについては,通路部分をトンネルとすることが できる。この場合においては,1の規定中,開放性の規定については適用しない。
(1) 階段から道路が見通せること。
(2) トンネル部分の長さは 30m以下とすること。
(3) 耐力壁であること。
(4) トンネル通路部分の面積に対し,1/50以上の排煙上有効な開口部を設けること。
(5) トンネルの出入口以外の開口部がないこと。
(6) 非常用照明装置を設置すること。
(7) 仕上げは,不燃材料であること。
(8) 天井高さは 2.1m以上であること。
注)トンネル部分に,3の扉,5の開口部,6の駐輪場の設置は,できません。
関係法令等
関連する法令(法第35条、法別表第1、令第116条の2、令第128条、令第128条の2)
概略だけでなく根拠法令を必ずチェック!お願いします。
令第128条:敷地内の通路
【令第128条:敷地内の通路】
建築基準法施行令第128条
敷地内には、第123条第2項の屋外に設ける避難階段及び第125条第1項の出口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる幅員が1.5m(階数が3以下で延べ面積が200m2未満の建築物の敷地内にあつては、90cm)以上の通路を設けなければならない。
令第128条の2:大規模な木造等の建築物の敷地内における通路
【令第128条の2:大規模な木造等の建築物の敷地内における通路】
1 主要構造部の全部が木造の建築物(法第2条第9号の2イに掲げる基準に適合する建築物を除く。)でその延べ面積が1,000m2を超える場合又は主要構造部の一部が木造の建築物でその延べ面積(主要構造部が耐火構造の部分を含む場合で、その部分とその他の部分とが耐火構造とした壁又は特定防火設備で区画されているときは、その部分の床面積を除く。以下この条において同じ。)が1,000m2を超える場合においては、その周囲(道に接する部分を除く。)に幅員が3m以上の通路を設けなければならない。ただし、延べ面積が3,000m2以下の場合における隣地境界線に接する部分の通路は、その幅員を1.5m以上とすることができる。
2 同一敷地内に2以上の建築物(耐火建築物、準耐火建築物及び延べ面積が1,000m2を超えるものを除く。)がある場合で、その延べ面積の合計が1,000m2を超えるときは、延べ面積の合計1,000m2以内ごとの建築物に区画し、その周囲(道又は隣地境界線に接する部分を除く。)に幅員が3m以上の通路を設けなければならない。
3 耐火建築物又は準耐火建築物が延べ面積の合計1,000m2以内ごとに区画された建築物を相互に防火上有効に遮っている場合においては、これらの建築物については、前項の規定は、適用しない。ただし、これらの建築物の延べ面積の合計が3,000m2を超える場合においては、その延べ面積の合計3,000m2以内ごとに、その周囲(道又は隣地境界線に接する部分を除く。)に幅員が3m以上の通路を設けなければならない。
4 前各項の規定にかかわらず、通路は、次の各号の規定に該当する渡り廊下を横切ることができる。ただし、通路が横切る部分における渡り廊下の開口の幅は2.5mメートル以上、高さは3m以上としなければならない。
一 幅が3m以下であること。
二 通行又は運搬以外の用途に供しないこと。
5 前各項の規定による通路は、敷地の接する道まで達しなければならない。
建築基準法施行令第128条の2
【法第35条:特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準】
建築基準法第35条
別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が3以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が1,000m2をこえる建築物については、(中略)敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。
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